前回その1でパラシュート放出装置を作った3号機の基本設計について書きます。
また到達高度と獲得速度を求めるプログラムについても2号機のときから進化させました。
- 水を噴出しているとき(以下水噴出ステージ)については、タンク内の水体積変化とロケットの速度を連立させて解くようにしました。
- 水噴出ステージが終わった後の飛行(以下慣性飛行ステージ)についても計算を追加して、最高到達高度を計算するようにしました。
3号機は打ち上げた結果、水漏れと噴出速度が遅い不具合を抱えていることが分かっていますが、構造の問題なので基本設計についてはしばらくこのままでいきます。(4号機も実際踏襲しています)
目次
検討ツール
最初に検討用のエクセルシートとPythonプログラムを紹介しておきます。
水ロケット基本設計(Water-rocket-design.xlsx)
水ロケット解析プログラム(Github)
始めのエクセルシートは色々とロケットの諸元を入力すると重心位置と安定性の計算をしてくれます。概算高度の計算シートもありますが、今となっては不要かも。
イメージはこんな感じです。自分用には味気ないエクセルシートだったのにカラフルになってちょっと楽しげ。
水ロケット解析プログラムはPythonで書かれていますのでPythonが実行できる環境で実行してください。今のところソースコードにロケットの設定を直接を書き込んでしまっているので、自分の環境に合わせて変更するにはソースを書き換えるしかありません。そのうちウェブ上でパラメータをいじれるようにしたい。
これらツールを使って基本設計を検討していきます。
水ロケット3号機の基本設計
目標高度からロケットのサイズを決定する
エクセルシートの概算高度検討シートと解析プログラムを使っておよその到達高度を予測して、目標に届くようロケットのサイズを決めます。
元々はプログラムでロケットのタンクサイズと水の量を変更して発生する推力による力積を求め、それをエクセルシートに入力して到達高度を概算で求めていました。
しかし、解析プログラムで到達高度も計算できるようになってしまったので、プログラムでパラメータを変更して高度を求めれば良くなりました。
どちらにせよ、ここで機体のサイズと水容量を決めます。3号機の場合は目標高度を30mとして、タンクを200mm延長して容量を2.76Lとしました。
ここで計算するにあたって機体の質量を入力する必要があったので、先に回収装置を作って質量と重心位置を実測しています。
ちなみに意外とタンク容量を増やしても到達高度は伸びません。容量拡大とセットで初期圧力も上げることが必要です。
安定性から重心位置とフィン仕様を決定する
安定性を確認しながら、フィンの形状を決めます。必要なら重りを追加して重心位置を調整します。ロケットを上向けに置いた状態で、風圧中心よりも重心位置が上にいないと不安定になります(宙返りします)。
また、水ロケットは水の噴出前後で質量と重心位置が大きく変わります。通常は水を満載した打ち上げ時に重心が最も下に下がるので不安定になりやすいです。
重心の確認
エクセルシートの「仕様・重心計算」シートに機体各部品の寸法、質量、重心などを入力して、機体全体の重心を求めます。
安定性の確認
エクセルの「安定性計算」シートです。
機体の寸法を入力して風圧中心を計算し、重心位置と比較して安定性を計算します。噴射前後で0以上になるように尾翼のサイズ・形状やペイロードの位置を調整します。
調整は、とにかく重心を上に風圧中心を下に持っていくようにします。
重心を上に持っていくには重いもの(=ペイロード)を上に持っていきます。必要ならフェアリングの上部に重りを入れます。
風圧中心を下に持っていくには、尾翼の面積を増やすか、尾翼の枚数を増やすか、尾翼を下に伸ばすか、ロケットを細長くします。
これらを考えて、先ほどの「仕様・重心計算」シートで主にフィンの寸法を検討します。
機体質量からパラシュートサイズを決定する
ここまでで機体の仕様が決まったと思うので、「パラシュート検討」シートを使って質量と落下速度からパラシュートのサイズを決めます。
計算方法は主に「新版 手作りロケット入門」(Amazon)を参考にしています。
パラシュートを切り出す生地のサイズまで求めてくれるので簡単です♪
パラシュート用六角形生地の作り方
エクセルシートにも書きましたが、正方形の生地から正六角形を切り出すやり方を載せておきます。
LpとDphがなぜこの式になるのか気になる人は図形の問題と思って考えてみてください。
三角定規の3辺の比を知っていて展開図が書ければ解けます。
これで作成に必要な検討が出そろったのであとは作るだけです。
Let’s Make!
抜けている検討項目
今回検討が抜けている項目です。
動安定
安定性の計算は静安定しか見ていません。動的に振動が収束するのか本当はちゃんとチェックしないといけない。
ちなみに今の機体は風に弱いので改善の余地があります。
抵抗計算
抵抗係数の検討が抜けています。プログラムではロケット全体の抵抗係数を一般的な値(Cd=0.85)で計算してます。
0.85の出典は「アマチュア・ロケッティアのための手作りロケット完全マニュアル」(Amazon)から。
軌道計算
普通の水ロケットだと射角をつけて水平方向の飛距離を競うので、そうすると軌道を計算したくなります。
いまのところ垂直方向に打ち上げていて軌道もくそもないので未実装。
次に何を書こうかな
ストックのあるネタ的には以下
- 解析プログラムの修正内容と計算内容…自分が忘れないうちに
- 4号機の製作…3号機は不具合があるので4号機
- 3代目ランチャーの製作…ホースカプラ無しのランチャー
やりたい内容的には以下
- ロガーの作成…まだブレッドボード上にいる
- ログの取得…4号機をロストしたので5号機作らな
- ロケットの大型化…CanSatサイズが載るようにしたい。ただ今の方式だと打ち上げ荷重が高すぎるんだよなぁ
- 解析プログラムの改善…ヘタに考え休みにニタリの数式理解と導入
- 通信実験…CWによるテレメトリ送受信。ハム3級取らな