水ロケット2号機の設計 その1 ペットボトルの計測

最近「人工衛星をつくる」なる本を読みました。超小型(10cm立方で1kg程度)の人工衛星を作る本で、読み物としてもとても面白く、それでいて実際に作るうえでも次に繋がる良い本だったと思います。

この本を読んだからというわけでもないですが、以前作って全く飛ばなかった水ロケット(ペットボトルロケット)に再挑戦します。

最終的には高度100mぐらいへcansatを飛ばせるようなものが作れるようになりたいですが、まずはペイロード無しで真っ直ぐ飛ばすところからリトライします。

あまりやることを増やすとどれもが中途半端になりそうですが、鉄は熱いうちに打てということもあるので今回は手を付け始めることにします。

前回適当に作っただけで失敗しているので今回はきちんと設計から実施します。
ちゃんと設計していないものは動かないと思ったほうがいいのは仕事も趣味も同じですね。

前回の反省

前回の「パラシュート付き水ロケットを作ってみた」では発射直後から回転してしまいほとんどまともに飛行しませんでした。機首部にパラシュートを積んでおり重心位置が悪かった可能性が高いのと、発射台も無しで適当に打ってるので初期入力が入ってしまった可能性もあります。

ということで、前回の失敗を踏まえて以下は最低限実施したいと思います。

  • 発射台の整備(発射時の余計な入力を低減する。空力による飛行安定性が得られる速度まで飛行方向をガイドする)
  • フィンの取り付け精度向上(飛行安定性の向上)
  • 重心と空力中心の設計(飛行安定性の向上)
  • 単純なロケット本体のみとする(設計要素を減らして不具合の切り分けを容易にする)
  • 到達速度、到達高度、飛距離などの予測(目標の達成度を測れるようにする)

こうやって書いてるとやっぱり風洞欲しくなるなぁ。簡単なものでもいいからそのうち作ろう。

閑話休題

まとめると、発射台を作る、ちゃんと設計する、製作精度を向上するの3点ですね。
きちんと原因究明とその検証という手順を踏んで対策を打ってませんが、その辺はトライアンドエラーができるスモールプロジェクトの利点ということで、この2号機自体が検証という扱いになります。

さて、ではさっそく設計をはじめる準備をしましょう。

設計準備 ~ペットボトルの計測~

水ロケットはペットボトル内に水と圧縮空気を入れて、空気の圧力で水を噴出させて、その反作用を動力に飛行します。この時、圧力をかける断面積と水が出るノズルの断面積の比によって水の噴出速度が変わります。噴出する水の量が多くて速度が速いとより強い反作用が働くことになります。

つまりペットボトルの断面積とノズルの断面積がロケットの速度に影響することになります。

ということで、詳しくロケットの運動を見ていく前にペットボトルの形状を計測してしまいましょう。

ちなみに今回は三ツ矢サイダーの1.5Lペットボトルを使用しています。

必要なもの

今回の計測に使用したものは以下です。無かったら工夫して測るか、そんなに高いものでもないので素直に買うか、人が計測したものを流用しましょうw。
私の計測データはこの記事の中で公開してます。

  • ロケットの材料にするペットボトル (計測対象)
  • 大き目の紙 (プロット用。1.5LのペットボトルでB5ノート見開きにぎりぎり収まった)
  • 鉛筆など(プロット用)
  • 三角定規(プロット用)
  • 定規(プロット用と水を入れて軽量するとき用。ぎりぎり端っこからメモリのあるやつが測りやすい)
  • はかり(水を入れて計量するときに使用)

外形の計測

単純に紙の上にペットボトルを置いて、三角定規を当てて位置をプロットして、それを後から線で繋いでいきます。(下図)

一番下の部分は形状が複雑なので計測していません。(図の水計量で近似の部分)
どうせ打ち上げるときにこの部分までは水を入れないので体積だけ求めて(後述)円筒形に近似してしまいます。

大体の形状は底面から65mm~187mmの間はΦ86mmの円筒で少し膨らんだあと、ふたの部分に向けて細くなっていきます。後ほど計測結果に合うように形状を数式化します。

板厚の計測

上記は外形の形状なので、断面で考えた場合ボトルの厚さ(板厚という)を引かないといけません。ふたの部分は定規で測れるので良いのですが、見る限りふたの部分よりも本体部分のほうが薄くできてそうです。今回は水を入れて質量の増加から内径を求めて先ほど計測した外径から引くことで板厚を求めます。

水を入れて計測した結果

底面から水面

底面から水面までの距離
[mm]
重さ[g]
74 461
87 544
②-① 13 83

②-①の部分に注目して、重さ83gの水の体積を求めて、高さ13mmで割ることで断面積、さらに直径を計算で求めます。

水の密度は1g/cm3です(覚えやすい!ちなみに私は1リットル1kgで覚えてます)。
そしてcm3は1000mm3なので、83gの水の体積は83×1000=83000mm3。
これを13mmで割って、断面積は6384.6mm2。
円の面積の式は(直径/2)^2*円周率 なので、

√(6384.6/3.14159) *2 = 90.16

計測した外径が86mmだったので、板厚は。。。ってヲイ!マイナスやん!

困りました。。。どちらを正しいと考えましょうか?
外径形状の計測のほうはしっかり固定していないので誤差が大きいと考えられます。なので、水の計測で求めた内径90mmという値を信じることにします。

底面部の円筒近似

底面の形状は複雑なのと、ここまで水を入れることはないため、一定断面の円筒形で近似します。近似する範囲は底面から65mmまでの範囲とします。

高さ74mmまで水を入れたときの重さが461gで、水を入れないペットボトルの重さが45gなので、差を取って水の重さだけにすると416g。

次に、高さ74mmだと求めたい高さ65mmに対して9mm分の水を入れすぎているので、入れすぎ分の重さ求めます。
先ほど求めた断面積 6384.6mm2×高さ9mm÷1000で、57.5[g]

なので、416g-57.5gで358.5g
高さ65mmでこの重さになる円筒の底面を求めると、
358.5×1000/65 = 5515.4m2
直径は √(5515.4/3.14159) *2 = 83.8 mm (内径)

ということで、底面~高さ65mmまでの底面部は内径Φ83.8mm、高さ65mmの円筒で近似することにします。

ペットボトル形状全体の数式化

形状を求める準備が整ったのでペットボトルの形状を数式化して計算式にぶち込めるようにします。
と、その前にそれぞれの部位について現状を整理すると以下の図のようになります。

A: 底面部 内径Φ84の円筒で近似
B: 中央部 内径Φ90の円筒で近似
C: 先端部 このあと計測して数値化
D: 接続部 内径Φ21.5mmの円筒で近似する。実測値。

ということで主にC部を中心に計測結果を整理していきます。

先端部の計測結果の整理

紙に書き写したポイントを計測してエクセルに打ち込んでいきます。
計測ポイントを底面からの距離と中心からの距離(半径)を2軸のグラフにしてまとめます。
上記外径形状の半径に2mm足して内径の半径にしています。(感覚的にはものすごく気持ち悪いですが)
ノズル接続部については、内径が実測できるのでそこはΦ21.5mmの半分で10.75mmの円筒としています。

エクセルに入力した状態を見たほうが早いと思いますので以下エクセルデータとキャプチャ画像をアップしておきますので自己責任でご自由にお使いください。

bottle-data.zip

上記の図の黒い線の部分が先端部になり、2次曲線で近似しています。式はエクセル君が求めてくれてます。
なお、それ以外は折れ線で近似することにします。

数式化

形状のデータがそろったので数式化します。

最終的に必要となるのは、①ロケット打ち上げ時の水面位置に対してボトルの断面積がどうなっているか?と、②水が噴出されたときに水面がどの位置まで移動するか?の2点です。

ボトル底面からの距離xとその位置でのボトルの断面半径rを数式で表せれば①の断面積は簡単に計算できます。
また、②についてはxに対してボトルの体積を求めた水の位置を求めてあげます。ちょっとめんどくさそう。でもこれも各断面積が分かれば力技でも何とかなります。

ということで、xとdの式をxによる場合分けでまとめます。

x<65の時

d=42

65≦x<187の時

d=45

187≦x<200の時

d=45+(x-187)*0.154

200≦x<240の時

d=47-(x-200)*0.1

240≦x<280の時

d=-0.016834*x^2+7.9672*x-899.45

x≧280の時

d=10.75

今回は以上です。
次の時にロケットの運動方程式を作って(といっても先人の後をなぞるだけ)、今回求めた式をぶち込んで使います。

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