ラジコン飛行機 練習機の設計 その8 -空力特性の確認 ③有害抗力(尾翼・胴体)-

前々回の誘導抗力検討前回の主翼の有害抗力検討に引き続き、尾翼と胴体の有害抗力を確認して全機の抗力係数を求めます。

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胴体の有害抗力

まずは必要な情報を集めます。

投影面積 を求める

胴体の投影面積をCADデータを使って求めます。ただ、FreeCADで投影面積を求める方法がわからんかったので、一度STL形式でデータを書き出して、別のソフトを使って計測しました。以下、その詳しいやり方を書いています。

STLファイルの出力

まずはFreeCADで測定する部位のデータをSTL形式で出力します。以下、FreeCADでファイルを開いて出力する部位を選択した状態。今回抵抗を求める胴体のデータを出力します。

この状態から、ファイル→エクスポートと進むとダイアログが開くので、ファイルの種類を「STL Mesh(*.stl *.ast)」を選んで、適当なファイル名をつけて保存すれば出力できます。

STLファイルビューアーで開く

投影面積を測るのに使用するソフトは「Hira Stl Viewer」です。リンク先のページからダウンロードして解凍すれば使用できます。

ソフトを立ち上げて、先ほど出力したSTLファイルをドラッグアンドドロップすると以下のように開けます。

まず、上面の投影面積を求めてみます。

投影面積の計測

データを読み込んだ状態で、メニューの解析→投影面積計算で解析ダイアログを表示します。

計測するモデルを右クリックでピック(選択)します。下図がここまでやった状態です。

解析ダイアログの「計算」ボタンを押すと、ダイアログに投影面積が表示されます。

ここでは「24834」と出ました。超ざっくり手計算だと25000ぐらいなので、単位はちゃんとmm^2になっているっぽい。

側面の投影面積測定

Hira Stl Viewerのヘルプを見ると投影方向はXY平面なので、側面積を求めるにはオブジェクトをX軸中心に90度回転させる必要があります。

メニューの「変形」から「回転移動」を選んで回転移動ダイアログを表示します。回転軸を始点と終点で指定して、回転角度分を回転軸を中心に回転させるっぽい。

X軸を中心軸にしたいので、始点を原点(X,Y,Z)=(0, 0, 0)として、終点をX軸上の適当な点にします。例えば(100,0,0)。回転角度は90度にして、回す部品をピック。(ここまでで下図)

で、ダイアログの「回転移動」ボタンで回転。無事回りました。上下がおかしくなったけど投影したら同じなので気にしません。

この状態で、上面図と同じように投影面積を計測してやります。結果は「34127」と出ました。

最後に同様に前面投影面積も求めておきます。これは「6536mm^2」となりました。

摩擦抵抗と圧力抵抗の計算

数値がそろったので摩擦抵抗と圧力抵抗を求めましょう。

本当は上面図の面積24834mm^2は主翼に隠れる部分を含んでいるので、摩擦抵抗についてはその分は引いて計算しないといけないのでしょうが、そのまま計算します。

レイノルズ数

まずはレイノルズ数を求めます。

$$ Re = \frac{U l}{\nu} $$

Uは飛行速度:14.4m/s
lは胴体の長さ: 0.488m (CADで計測)
ν(ニュー)は空気の動粘度:1.407E-5 (標準大気、標高0mの値)

上記を代入して、Re=4.811E+5

境界層の層流と乱流の遷移領域が5E+5程度からなので微妙ですが、厳しめに見て遷移領域として胴体の摩擦抵抗を計算することにします。

胴体の摩擦抵抗係数

遷移領域の摩擦抵抗係数の式から、胴体の摩擦係数Cfbは、

$$ C_{fb} =  2\frac{0.455}{(\log_{10}Re)^{2.58} (1+0.144M^2)^{0.65}} – 2*\frac{1700}{Re} $$

Mはマッハ数: 0.0423 (音速 340.294m/sで計算)
Reは先ほど求めた4.811E+5

これらを代入して、Cfb=0.00600となりました。

この摩擦抵抗係数から抵抗値を求めるには胴体の面積を使いますが、機体全体で抵抗係数を考える場合は主翼の面積を使って求めるので、主翼面積をかけて抵抗値になるよう変換しておきます。

Cfb’ = Cfb*(胴体上面積+胴体側面積)/主翼面積
= 0.006*(0.02834+0.034127)/0.153
= 0.00231377

胴体の圧力抵抗係数

求めるのに胴体直径が必要ですので、胴体の前面投影面積と同じ面積を持つ円の直径で置き換えます。この直径をdと置くと、

$$ \frac{\pi d^2}{4} = 前面投影面積 = 0.006536 \\
d=\sqrt{\frac{4*0.006536}{\pi}}=0.0912$$

f=l/d (胴体長さ÷胴体直径)とするとf=5.3494、胴体の圧力抵抗係数Cbpは

$$ K_{fp} = 1+\frac{60}{f^3}+\frac{f}{400} = 1.4053 \\
C_{bp}=K_{fp}C_{fb}’ = 1.4053*0.00231377 = 0.0032516 $$

胴体の有害抗力係数

摩擦抗力と圧力抗力の係数を足し算して以下のようになります。

Cb=Cbp+Cfb’
= 0.0032516+0.00231377
= 0.0055654

尾翼の有害抗力

尾翼の有害抗力計算は主翼と同じなのでそれは良いのだけど、形状が単純なテーパー翼ではないので空力平均翼弦を求めるところからはじめます。

空力平均翼弦(MAC)をどう求める?

空力平均翼弦(MAC: mean aerodynamic chord)はテーパー翼の場合は紙と鉛筆と定規があれば求まります1)が、楕円翼など形状が複雑な場合は、翼の重心を通る翼弦として求めることができます。ちなみに主翼は矩形翼なのでカッコつけてMACとか書いてるけど、どこ位置でも翼弦は同じです。

重心位置はFreeCADで求められるので、翼の平面形を作って一定に押し出して重心を測ることで求めることができます。(具体的なCAD操作法は「FreeCADメモ-003 体積、表面積、重心を求める」を参照)

以下実際に垂直尾翼を計測している図です。

重心のYが61.2になってます。座標は、図の上下方向がYで原点を尾翼の下端に置いているので、尾翼下端から61.2mmの位置で前後長を測ればMACが求まります(下図、黄色い枠の寸法)。

水平尾翼は左右対称なので片翼の形状で重心を求めて、同じようにMACをスケッチして求めています。

垂直尾翼:尾翼下端から61.2mmの位置。翼弦長は108.1mm

水平尾翼:機体中心から62.7mmの位置。翼弦長は120.8mm

【メモ】これでいままで適当に求めてたモーメントアームがちゃんと求まります。(精度が上がったからなに?という話は置いておいて。)今後三面図を更新するときは記入するようにしようと思うのと、重心を再検討するときにも使うのでメモ。

摩擦抗力→圧力抗力への変換をどうしようか?

最大翼厚位置の後退角が必要なのですが一定にはならない。というかそれほど精度もよくないので、この辺はあきらめて圧力抵抗は摩擦抵抗とイコールということにします。

実際に尾翼の抗力係数を求める

MACからレイノルズ数を求めてそこから摩擦抵抗係数を求めます。
求めた係数は尾翼面積をベースにしているので、主翼との面積比をかけて主翼面積で考えられるように変換します。
圧力抵抗係数は摩擦と同一と考えて、摩擦抵抗係数を2倍した値を尾翼の抗力係数とします。

垂直尾翼

MAC=108.1mm=0.1081m
Re=14.4*0.1081/14607E-5 = 1.066E+5 (層流)
摩擦抵抗係数は2*1.328/√1.066E+5 = 0.00814
尾翼面積/主翼面積をかけて変換
0.00814*0.008325/0.153 = 0.00044
圧力抵抗係数も同じとすると抗力係数は2倍して、
0.00044*2=0.00088

水平尾翼

MAC=120.8mm=0.1208m
Re=14.4*0.1208/14607E-5 = 1.191E+5 (層流)
摩擦抵抗係数は2*1.328/√1.191E+5 = 0.00770
尾翼面積/主翼面積をかけて変換
0.00770*0.025953/0.153 = 0.001306
圧力抵抗係数も同じとすると抗力係数は2倍して、
0.001306*2=0.002611

着陸装置と支柱の抵抗

着陸装置と支柱については円筒の抵抗で近似計算します。3)

円筒の抵抗は10^3<Re<2*10^5では1~1.2でほぼ一定なので、抗力が主翼面積に比例するよう以下のように置きます。

$$ C_{D etc}=1.0 \frac{前面投影面積}{主翼面積} $$

いま設計中の機体はランディングギア、尾そり、支柱があるので、それぞれの前面投影面積を合計してやると、0.005732m^2になりました。主翼の面積が0.153m^2なので、
CD_etc=1.0*0.005732/0.153=0.03746

この値が一番大きいという衝撃。

プロペラの有害抗力係数(参考)

動力飛行時には関係ないですが、モーターグライダーなどでペラを止めた状態で滑空する際のペラの抵抗値は以下の式で求めることができます。4)

$$ 0.08 \frac{プロペラ直径^2}{主翼面積} $$

計算してみると結構大きな値になる為、滑空比を重視するグライダーやフリーフライト機では折りペラを使って抵抗を減らす工夫をしています。

全機の抗力

ここまでで必要な情報がすべてそろったので全機の抗力を求めます。

主翼の誘導抗力係数

前々回の誘導抗力の記事で作った誘導抗力計算シートで計算します。入力パラメータは以下。

アスペクト比: 6.536
テーパー比: 1.0
翼形の揚力傾斜: 6.2527

結果は以下。(αa は 絶対迎え角[rad])

揚力係数CL =4.606αa
抗力係数CDi = 10.86 αa^2

最大飛行速度時の上下方向の力のつり合いから、機体質量を0.3kgと揚力が等しくなるので、

$$ 0.3g = \frac{1}{2}\rho 4.606 \alpha_a S V^2$$

g=9.8m/s
S=0.153m^2
V=14.4m/sを代入して解くと、αa = 0.03287[rad] (=1.883[deg])

このαaを抗力係数の式に代入してCDiを求めると、誘導抗力係数CDi=0.001174

全機の抗力係数

全機の抗力係数を求めます。もうあとは以下の足し算だけです。

  • 主翼の誘導抗力係数 0.001174
  • 主翼の有害抗力係数 0.01329
  • 胴体の有害抗力係数 0.005565
  • 水平尾翼の有害抗力係数 0.002611
  • 垂直尾翼の有害抗力係数 0.00089
  • その他の部位の有害抗力係数 0.03746

合計すると0.06099

全機の抗力

抗力の式は全機の抗力係数をCDとすると以下でした。

$$ D=\frac{1}{2}\rho C_D S V^2 $$

これにそれぞれの数字を代入して解くと(ρ=1.225)

D=1.185 [N] = 0.121[kgf]

さて、以上で長らく行ってきた抗力の検討は終わりです。

次回、モーターとペラの選定を行いますが、今回求めた0.121kgfの推力を対気速度14.4m/sの状態で発揮できるペラとモーターの組み合わせを作れば良いことになります。

出典

  1. JAL 「航空実用事典 (翼型と翼)」
    http://www.jal.com/ja/jiten/dict/p030.html
    (最終閲覧日2017年4月8日)
  2. 木下祥次 「木下祥次の公式Webサイト」
    http://www.ob3.aitai.ne.jp/~kinosita/index.html
    熱流体力学講義 第9章 境界層と物体まわりの流れ
    http://www.ob3.aitai.ne.jp/~kinosita/lecture/ryuutairikigaku/neturyuutai(9shou).pdf
    (最終閲覧日2017年4月22日)
  3. 内藤子生(1976). 飛行力学の実際(増補) 日本航空技術協会 (Amazon) (楽天)
  4. 和栗雄太郎(2005). 模型飛行機の科学 養賢堂 (Amazon) (楽天)

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