ラジコン飛行機 練習機の設計 その7 -空力特性の確認 ②有害抗力(主翼)-

前回の誘導抗力検討に引き続いて今回も空力特性を確認します。今回は有害抗力を見積もります。
なかなか情報が無くて実験的にしか求まらないかと思いましたがなんとかなりそうです。
精度はそれなりですがまあいいでしょう。

有害抗力全体を書こうと思っていましたが、分量も多くなったので今回は主翼分までです。

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参考ページ / 参考書

まずは今回参考にしたページと参考書を以下に紹介しておきます。出典とかぶりますが気にしない。

UIUC Low-Speed Airfoil Tests
UIUC(イリノイ大学)の低速翼型実験結果のページ。ここの「SoarTech 8 – Airfoils at Low Speeds」からダウンロードできるPDFに掲載されているクラークYのデータを今回の記事の元データとして引用しています。

名古屋大学大学院 流体力学研究グループ
ここの「学生実験」の過去の実験データにラジコン飛行機の風洞実験結果があってめっちゃ素敵。というかいま見つけたw
ここの実験結果を見れば今回検討した抗力の検証ができるかも。

航空力学の基礎 牧野光雄著 産業図書
前回の記事のメイン参考書。というか前回はほぼこの本のまんまです。鳥人間界隈では有名っぽい。装丁が銀色なので銀本と呼ばれているらすぃ。始めはとっつきにくい印象だったけど、丁寧に書かれているので理解しやすい。

模型飛行機の科学 和栗雄太郎著 養賢堂
テーマはフリーフライト機だけどラジコンにも使えるまともな模型飛行機の理論と設計の本。一通りの内容が書いてあるのでお得感がある。著者は確かディーゼルエンジンで有名な方だったと思う。絶版本だけど2017年時点ではそれほど価格高騰してない。

飛行機設計入門 片柳亮二著 日刊工業新聞社
薄めの本で良くまとまってると思う。でも圧縮されているせいか読みやすいかというと意外とそうでもない。今回、圧力抵抗を求めるのに唯一予測計算式が載ってたのはこの本でした。

兵神装備オリジナル技術データ集 エンジニアズブック Vol18
標準大気の性質を調べてて見つけました。個人情報の入力が必要ですが無料(!)
欲しいなぁと思う情報が載ってて辞書的に使えそうな素晴らしいデータ集なのに無料というのが凄い。さっそく申し込んでしまった。

有害抗力の式

有害抗力のなかみ

誘導抗力以外の抗力が有害抗力と呼ばれますが、その中身を分解すると、摩擦抗力、圧力抗力、干渉抗力の3つがあります。

干渉抗力

このうち干渉抗力は2つの部位(例えば翼と胴体)を組み合わせることで、お互いの形状で風の流れが乱されて発生する抗力です。簡単な計算では求められないため、今回の見積もり対象からは除外します。

減らすためには2つの部位が繋がる部分にフィレットを付けてなだらかにするなどして流れを乱さないようにします。

摩擦抗力

摩擦抗力は飛行機が空気の中を通るときにその表面と空気の間で発生する摩擦によっておきる抵抗です。

実機だとこの抗力が支配的らしい。

圧力抗力

圧力抗力は飛行機の前面に風が当たることと、形状が悪いと機体後ろの圧力が低くなって引っ張られることで発生する抗力です。あと、迎え角を大きくすると風に対して当たる機体面積が増えるので大きくなります。(ちゃりで走ってて体を低くすると抵抗が減るのと逆の感じ)

減らすには薄い翼を使ったり胴体の断面積を減らすなどして、前面投影面積を減らしてやります。

また、層流は剥離しやすく後面の圧力低下が起こりやすいので、翼表面を荒らすなどして流れをはじめから乱流化してやることで、剥離を遅らせて圧力低下を防ぐという方法もあります。(乱流翼と呼ばれてます)

摩擦抗力の式

単純化して薄板表面の摩擦として計算します。

ちなみに流れが乱流か層流かで計算式が変わります。乱流と層流のどちらになるかはレイノルズ数Reによります。レイノルズ数と摩擦抗力係数の関係の図を以下に引用します。1)

  • Re<5×10^5 : 層流
  • Re>10^7~8:乱流
  • 5×10^5<Re<10^7~8: 層流と乱流が混じった遷移領域

さて、いま設計中の練習機だと主翼のコード長153mm、最高速を最低速度の3倍とすると約15m/sなので、Reは1.5×10^5程度。なので流れは層流と考えていいはず。少なくとも主翼や尾翼については。
胴体は流れの方向に長いので平板と考えた場合Reも大きくなる。もしかすると乱流境界層として計算したほうがいいのか?
と思って考えてみましたが、胴体って約600mmで主翼のコード長153mmに対して約4倍。6×10^5ぐらいかぁ。うーん微妙だ。。。
こんなに速度出さない気もするけど厳しめに見て遷移領域の計算式で計算することにします。

さて、まず層流の場合の抵抗係数は以下の式で表されます(ブラジウスの厳密解)2)

$$ C_f = 2\frac{1.328}{\sqrt{Re}} $$

C_f: 抵抗係数(単位長さ当たりの抵抗係数。流れに垂直方向の板の長さをかけると全体の抵抗係数になる)
Re: レイノルズ数 (Re = U*l/ν)
U: 流速
l: 代表長さ(ここでは流れ方向の板の長さ)
ν(ニュー): 動粘性係数。標準大気の場合は1.4607*10^-5

上下両面の摩擦について計算するために2倍にしています。なので胴体などの面積を考えて適用するときは要注意。

なお詳しい導出は出典の模型飛行機の科学が分かりやすかったので参照して下さい。

次に、乱流の場合の式1)

$$ C_f=2\frac{0.455}{(log_{10} Re)^{2.58} (1+0.144M^2)^{0.65}} $$

M: マッハ数(速度が音速の何倍か)

基本的に乱流領域ではないので上式は使いません。

最後に遷移領域の式1)

$$ C_f=2\frac{0.455}{(log_{10} Re)^{2.58} (1+0.144M^2)^{0.65}}-2\frac{1700}{Re} $$

胴体の摩擦抵抗係数はこちらで求めようと思います。

圧力抗力

次に圧力抗力。なかなか計算式が載ってなかったので見つけるの大変だったずら。飛行機設計入門に予測式が載っていましたので適用することにします。

翼厚による圧力抵抗

以下係数を主翼・尾翼の摩擦抵抗係数に掛けて使用する。1)

$$ K_{WP} = [1+\frac{0.6}{(x/c)_m} \frac{t}{c}+100(\frac{t}{c})^4][1.34M^{0.18}(cos \Lambda_m)^{0.28}] $$

(x/c)m:最大翼厚位置。前縁~最大翼厚位置までの距離÷コード長
t/c:翼厚比。翼厚÷翼弦長
(上記2つはどちらもXFL5で翼型を読み込むと計算してくれる)
Λm:最大翼厚の後退角

胴体による圧力抵抗

以下係数を胴体の摩擦抵抗係数に掛けて使用する。1)

$$ K_{FP} = 1+\frac{60}{f^3}+\frac{f}{400} (f=\frac{l}{d}, 胴体長さl, 胴体直径d) $$

その他の部位の抗力

いままでで、翼(主翼と尾翼)、胴体の摩擦抗力・圧力抗力を求められるようになりました。それ以外の足や尾そりなどは前から見たときの幅を円筒の直径に見立てて、円筒の抗力係数0.3で計算します。3)

有害抗力の計算値と実験値の比較

計算式が出そろったので実際に計算してみて実験値と比較してみます。
とりあえず実験結果が入手しやすい主翼のみ。

実験値

実験結果はUIUCのAIRFOILS AT LOW SPEEDS(PDF)のデータを引用させていただいています。4)

クラークYではレイノルズ数違いで3パターン実験がなされています。

  • Re: 61300, 最小抗力係数Cdmin: 0.0223 (迎え角α: -1.90)
  • Re: 102600, 最小抗力係数Cdmin: 0.0189 (迎え角α: -0.85)
  • Re: 203800, 最小抗力係数Cdmin: 0.0097 (迎え角α: -0.85)

それぞれのReについて、以下の条件で数値計算で有害抗力を求めてみます。Reの違いは、空力平均翼弦長を代表長さとして固定して飛行速度の違いとして表現して計算します。

諸元・目標 記号 単位 備考
飛行速度 U Reに合わせる m/s
空力平均翼弦長 c 0.153 m 矩形翼で一定。練習機の153mmをm換算
翼幅 b 1.0 m  今回は使わない
最大翼厚位置 (x/c)m 31.31 % XFLR5で算出。前縁~最大翼厚位置までの距離÷翼弦長
翼厚比 t/c 11.72 % XFLR5で算出。最大翼厚÷翼弦長
最大翼厚の後退角 Λm 0.0 deg 後退角もテーパーもないためゼロ
動粘度(動粘性係数) ν 1.4607*10^-5 m^2/s 標準大気 標高0mの値
音速 340.294 m/s 標準大気 標高0mの値

諸元の定義は下図を参照。

なお、最大翼厚位置と翼厚比については、XFLR5で翼形データを読み込めば算出してくれます。以下はクラークYの翼形を読み込んで「Direct Foil Design」で表示した様子。赤枠で囲った部分が翼厚比と最大翼厚位置です。

計算結果と今後の方針考察

さて、今までの式を使って計算を実行します。流速UはRe=Ul/νから逆算。

主翼の圧力抗力係数をCwpと置くと、
Cwp=Kwp*Cf

有害抗力係数の計算値をCdwと置くと、
Cdw=Cwp+Cf

上記以外は既に出てる式なので再掲は割愛。

で、実際計算してみると以下表のような結果になりました。

Re:61300 Re:102600 Re:203800
流速 U[m/s] 5.85 9.80 19.46
マッハ数 M 0.0172 0.0288 0.0572
摩擦抗力係数 Cf 0.01073 0.00829 0.00588
摩擦→圧力変換係数 Kwp 0.8019 0.8798 0.9955
圧力抗力係数 Cwp 0.0086 0.00730 0.00586
有害抗力係数 Cdw 0.01933 0.01559 0.01174
Cdmin(実測) 0.0223 0.0189 0.0097
Cdw誤差(対実測) -13.3% -17.5% 21.0%

誤差で言うと大体±20%程度はあってあまり精度は良くないです。
Reが10万~20万で誤差の±が逆転しており求めようとしているRe15万程度ではちょうどいい感じになるかもしれませんw
胴体のReは主翼より大きくなることを考えると計算のほうが少し不利目に出そうなので、補正せずに計算値を使うことにします。

有害抗力の実際の見積もり

方針も決まったので、実際に抗力係数を計算していきます。
前のほうでも書きましたが、全体の前提条件として最高飛行速度の目標を最低飛行速度の3倍と仮置きします。

主翼の有害抗力

はじめに数字の整理から。実験との比較の時に近いですが、Uの定義は変更、空気密度と翼面積を追加。

諸元・目標 記号 単位 備考
最高飛行速度目標 U 14.4 m/s以上 最低飛行速度4.8m/s(17.3km/h)の3倍。51km/hでラジコンとしては遅めっぽい。
空力平均翼弦長 c 0.153 m 矩形翼で一定。153mmをm換算
翼幅 b 1.0 m
最大翼厚位置 (x/c)m 31.31 % XFLR5で算出。前縁~最大翼厚位置までの距離÷翼弦長
翼厚比 t/c 11.72 % XFLR5で算出。最大翼厚÷翼弦長
最大翼厚の後退角 Λm 0.0 deg 後退角もテーパーもないためゼロ
翼面積 S 0.153 m^2
動粘度(動粘性係数) ν 1.4607*10^-5 m^2/s 標準大気 標高0mの値
空気密度 ρ 1.225 kg/m^3 標準大気 標高0mの値
音速 340.294 m/s 標準大気 標高0mの値

主翼の摩擦抗力係数

摩擦抵抗係数を求めます。
まずはレイノルズ数

Re = Ul/ν
代表長さl=c(翼弦長)なので、
Re=1.508E+05

これを使って摩擦抗力係数を求めると上下両面で、
Cf=0.00684

主翼の圧力抗力係数

主翼の圧力抗力係数を計算します。

Kwpを計算すると0.9430 なので、

Cwp=Kwp*Cf
=0.9430*0.00684
=0.00645

主翼の有害抗力係数

有害抗力係数は摩擦抗力係数と圧力抗力係数を足して、

Cdw=Cwp+Cf
=0.00684+0.00645
=0.01329

有害抗力係数の定義と使い方を確認

今回使ってきた抗力係数のはCfもCwpも合計のCdwも翼の単位長さ当たりの抵抗係数なので、使い方をちょっとここで確認しておきます。
係数の定義は以下になります。

$$ C_{dw}=\frac{d}{1/2 \rho U^2 c} \\
変形して d = C_{dw} 1/2 \rho U^2 c \\
両辺に翼幅bをかけて d b = C_{dw} 1/2 \rho U^2 c b \\
db=Dw, cb=Sで変形 D=C_{dw} 1/2 \rho U^2 S \\
$$

Dw: 翼の有害抗力 [N]
d: 単位翼幅当たりの抗力[N/m]
S: 翼面積[m^2]
ρ: 空気の密度 1.225[kg/m^3]

ということで、結局普通の抵抗係数と同じように抗力を求められそうです。

まとめ

さて、やっと主翼の有害抗力係数まで求めることができました。

本当はこのあと、尾翼、胴体、その他の有害抗力を求めるところまで行きたかったのですが、タイムアップです。分量も多くなってきたので次回にまわそうと思います。

それではまた。

出典

これからは可能な限りちゃんと載せていこうと思います。とは言え論文や書籍ではないので孫引きとかもありますのであしからず。

  1. 片柳亮二 (2009). 飛行機設計入門 日刊工業新聞社 (Amazon) (楽天)
  2. 和栗雄太郎(2005). 模型飛行機の科学 養賢堂 (Amazon) (楽天)
  3. 内藤子生(1976). 飛行力学の実際(増補) 日本航空技術協会 (Amazon) (楽天)
  4. Selig, Donovan, and Fraser(1989). AIRFOILS AT LOW SPEEDS  H. A. Stokely, publisher (pdf)
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