ラジコン飛行機 練習機の設計 その6 -空力特性の確認 ①誘導抗力-

今回から機体の空力特性を把握してパワートレインを選定する準備をします。

ちなみに”パワートレイン”とは動力装置の総称で車だとエンジンやミッションなどをまとめて呼ぶときに使います。パワトレと略したりします。飛行機でも同じように呼ぶのかは分かりませんがモーターとかプロペラなどの総称として使おうと思います。

あと、空力特性と言っているのは抗力と呼ばれるもので、簡単に言うと空気抵抗です。

しばらくは数式が多めの予感です。ボリュームが多くなってしまったので今回は誘導抗力の計算までです。最後にエクセルの計算シートをアップしてるので、いっぱい読むのがだるい人はそちらをどうぞ。

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流れの確認

なんでモーターとかプロペラの話をしようとしてるのにいきなり空気抵抗が出てくるの?と思ったかもしれませんが、飛行機が飛ぶには空気抵抗に打ち勝つ必要があるので、その力を出せるパワートレインを選ぶ必要があります。なので、空気抵抗がどれぐらいかを知る必要があります。

この空気抵抗は抗力と呼ばれます。

抗力には2種類あって、一つは翼が揚力を発生させるときに同時に発生するもので誘導抗力と呼ばれるもの。
これは空を飛ぶために必要なものです。

もう一つは機体などに風が当たって発生する圧力によるものと、空気の摩擦力によるものを合わせたもの。一般的な空気抵抗のイメージはこっちだと思います。
こちらは飛ぶために直接必要なものではないので有害抗力と呼ばれます。

これら抗力は速度の2乗に比例して大きくなるので、速度が速くなるほど大きな力を出す必要があります。一方でプロペラの出せる力は速度が速くなっていくほど小さくなっていきます。
なので、徐々に速度を上げていくとどこかでこの力がバランスするところがあり、それが飛行機の出せる最高速度ということになります。

誘導抗力の見積もり

先に書いた通り、誘導抗力と有害抗力の2つあるのでそれぞれに分けて確認していきます。
まずは誘導抗力から。書いてるうちに量が多くなったので有害抗力は次回に回します。

誘導抗力については実機も模型も違いはないので実機の本を参考に検討します。参考書は「航空力学の基礎」(Amazon)という割と有名な本です。理論の詳細な説明は本に任せて省きますので、理論に興味がある方は読んでみてください。(それなりに物理・数学の知識がないと読めないので理系の人じゃないと厳しいかも)

えーと、以下参考書を頼りに自分の理解で記載しているので誤りとかあったらご指摘いただければと思います。

誘導抗力の見積もり方をすごく大雑把に言うと、翼を渦に置き換えてその渦の数式を解くことで揚力係数と抗力係数を求めます。

翼を渦に置き換える?

ゴルフをやる人にはなじみがあるかもしれませんが、ボールにバックスピンをかけると飛距離が伸びます。これは回転によって空気力が働いてボールが浮くためです。

何かに似てますね?そうです、翼です。
翼を渦に置き換えるのは、このバックスピンに置き換えてるようなイメージです。

んで、この渦は循環と呼ばれてます。この循環の式を解くことで揚力・抗力を求めていきます。

寸法などの定義

いま、翼の上面図で寸法を下図のように定義します。

翼幅: b
テーパー比: λ
翼根翼弦長: c0
翼端翼弦長: λc0
y座標を翼幅方向に取り原点を翼根とします。そうすると右翼端がb/2、左翼端が-b/2となります。
さらに、今後の計算を簡単にする為、以下のようにyをθ[rad]に置き換えます。

$$ y=-\frac{b}{2}cos\theta $$

こうすると、θ=0が左翼端、θ=πが右翼端を表すことになります。
あと、図に出てきてない定義は以下。

αa:絶対迎え角。ゼロ揚力線から測った迎え角。
c: 翼幅方向のある位置での翼弦長。θの関数。
m∞: 揚力傾斜。絶対迎え角の変化に対する揚力係数の変化代。

m∞は翼型によって異なりますが、おおよそ2πに近いのでm∞=2πσ (σ=0.8~0.9程度)とします。

循環の式

定義が出そろったので、これを元に循環を表す式をフーリエ級数のかたちで表すと以下となります。

$$ \sum_{n=1}^{\infty}(n \mu+sin \theta)a_n sin (n\theta) = \mu\alpha_a sin \theta  …① $$

$$ \mu=\frac{m_\infty c}{4b} $$

上記の循環は翼の幅方向のどの位置にいるかで値が変わります(θの関数)。

μの中身を翼型や翼の平面形によって変化させて解きます。

テーパー翼として循環の式を解く

いよいよ設計中の機体の情報を入れてこの式を解きます。

練習機は矩形翼なのですが、今後の発展性を考えてテーパー翼として循環の式を解きます。矩形翼は単にテーパー比λ=1とすればよいことになります。

まず、翼弦cをθの関数として定義しなおすと、

$$ c=c_0 [1- \frac{2(1- \lambda )}{b} y] = c_0 [1-(1- \lambda )cos \theta ]$$

翼に捩れも翼型の変化もないとしてμに代入して、

$$ \mu = \mu_0 [ 1-(1-\lambda ) cos \theta ] $$

$$ \mu_0 = \frac{m_\infty c_0}{4b} $$

翼面積をS、アスペクト比をAとすると、

$$ S=\frac{1+\lambda}{2}c_0 b \\
A=\frac{b^2}{S}=\frac{2b}{(1+\lambda)c_0} $$

上記Aを使ってμ0からc0/bを消去すると、

$$ \mu_0 = \frac{m_\infty}{2(1+\lambda)A} $$

このμを循環の式(①式)に代入します。
また、循環の対称性から偶数番目の係数a_2mはすべて0となり、係数の番号が進むと急速に値が0に近づくため、4つ(a1, a3, a5, a7)まで求めることにして、それより先はすべて0とします。
この条件で①のΣを展開すると以下の様になります。

$$ a_1\{\mu_0 [1-(1- \lambda) cos \theta ]+sin \theta \} sin \theta + \\
a_3\{3\mu_0[1-(1-\lambda)cos \theta] + sin \theta \} sin 3\theta + \\
a_5\{5\mu_0[1-(1-\lambda)cos\theta] + sin \theta \} sin 5\theta + \\
a_7\{7\mu_0[1-(1-\lambda)cos\theta] + sin \theta \} sin 7\theta \\
=\alpha_a \mu_0 [1-(1-\lambda)cos \theta ]sin \theta  $$

a1~a7の4つを求めるのに4つ式が必要になる為、θの値を0~πの範囲で4つ代入して4式にします。参考書と同じく、π/8, π/4、3π/8、π/2の4つを入れることにします。

また、μの定義に必要な以下の値は機体の数字を代入します。m∞のみ参考書の値です。

A=6.54、λ=1、m∞=5.5

これらを入れて計算するとμ0=0.210となります。

あとは、数値を入れて連立して解きます。。

$$ 0.226904 a_1 + 0.936276 a_2 + 1.324757 a_3 + 0.709647 a_4 = 0.080457 \alpha_a \\
0.648665 a_1 + 0.945996 a_2 – 1.243327 a_3 – 1.540658 a_4 = 0.148665 \alpha_a \\
1.047794 a_1 – 0.594925 a_2 – 0.755839 a_3 + 2.213238 a_4 = 0.194241 \alpha_a \\
1.210245 a_1 – 1.630734 a_2 + 2.051223 a_3 – 2.471713 a_4 = 0.210245 \alpha_a $$

$$ a_1 = 0.20299 \alpha_a \\
a_2 = 0.02753 \alpha_a \\
a_3 = 0.00593 \alpha_a \\
a_4 = 0.00109 \alpha_a $$

ちなみに上記の連立方程式をEXCELで解いてます。
その際以下ページの情報を参考にさせてもらいました。
EXCELで連立方程式を解く方法 | EXCELで統計解析

揚力係数CLと抗力係数CDiはそれぞれ以下なので、上記の結果を代入して求めることができます。

$$ C_L = \pi A a_1 = 4.1706 \alpha_a \\
C_Di = \frac{{C_L}^2}{\pi A} (1+\delta) = 0.8971 \alpha_a \\
ただし \delta = \frac{{3a_3}^2+5{a_5}^2+7{a_7}^2}{{a_1}^2} = 0.059636
$$

迎え角については、最高速の時に重力と釣り合う揚力を発生させられる迎え角を求めて代入します。

最後に、今回の計算を行ったエクセルファイルを以下に公開しておきます。
アスペクト比、テーパー比、翼形の揚力傾斜を入力すると揚力係数と抗力係数を求めます。

誘導抗力計算シート (xlsxファイル)

次回は有害抗力の計算を行います。先は長いなぁ。

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